第23章 大ハード

真っ直ぐ綺麗に上がった足が高い天井を蹴り抜き、胡乱な男が二人、リーとすれ違うように落ちてくる。

リーから行き合い様に身を捻っての回し蹴りを食らった一人は兎も角、もう一人の男は半ば体勢を崩しながら辛くも床に膝をついて、すかさずまだ空にあるリー目掛けてクナイを放った。

｢ぬッ｣

回し蹴りからの不安定な姿勢を狙われたリーが咄嗟に腕を上げて顔の前にかざした刹那、白い巻き紙がシュッと生き物のように走ってクナイを絡めとり、クンと退いた。

巻き紙は引く力で加速を付けながら解け、包み込んでいたクナイを巧みに反す。
クナイは来し方を逆さまに走って男の肩口に突き刺さった。

｢･･･ぅッ｣

｢ありがとうございます、テンテン！｣

｢お礼なんかいいから油断しないの！まだまだくるよ！｣

自らの肘に巻き戻した巻き紙をギュッと纏いつかせて、テンテンがニヤッと口角を上げた。

｢やるじゃん、お団子ちゃん｣

傀儡なしでも引けを取らない働きをしながら、カンクロウが辛くも笑う。

｢カン、クロウ････ッ、行けって、チヨバア達のとこにッ｣

激しい斬り合いを扇で交わしながらテマリが眉尻を上げて怒鳴る。

｢素性も知れぬガキに任せる気か!?行けッ｣

｢俺も行こう｣

ネジがフイと敵をいなしながら答えた。滑るように動いてカンクロウと刃を交わしていた男の背を抉るように指を立てて突く。

｢手ェ出すんじゃねェ！｣

カンクロウがネジを睨み付けて、テマリを襲う男の首筋に肘を捩じ込んだ。ネジは辺りを睥睨しながら真顔で答える。

｢地下には牡蠣殻がいる。俺たちは彼女に用がある｣

｢････木の葉の･････アタシらはチヨバアとエビ････｣

｢見損なうな。同盟に報わぬ木の葉ではない。増して一宿一飯の恩がある。返さずに済ますものではない｣

言い放ったネジに、リーとテンテンが気の荒い笑みを浮かべて頷いた。

｢ここは任せて下さい。問題ありません｣

リーが親指を立てる。

｢ネジも気を付けなよ！｣

テマリの背中に陣取りながらテンテンも片口をぐいと上げた。男前だ。

｢カンクロウッ｣

テマリに呼ばれてカンクロウは苦笑いした。

｢わぁかったから。行くからよ。頼んだじゃん、テマリ｣

ネジを促して走り出す。

｢髷に遅れとっちまったな｣

｢追い付けばいい話だ｣