第23章 大ハード
テマリは朝の巡回を終えて、朝食をとる為に食堂に向かっていた。
「あぁ、朝早いのは参る・・・」
欠伸をして腕を伸ばし、フと動きを止める。
「・・・・・・」
何か違和感を感じる。・・・異物感と言ってもいいような、ザラザラした気配。
何気なく前を向いたまま、目線だけ使って辺りを伺う。
昨夜カンクロウがおかしな連中を連れて来たと言っていたが、それか?
それにしては殺気を感じる。
・・・・まさか。外部のものがそう易々と入り込めるものではない・・・。
何しろここは砂の官舎なのだ。有象無象が簡単に出入り出来るところではない。
だが、それがただの有象無象ではないとすれば?
次の瞬間、テマリは大きく後ろに飛んで使い慣れた得物を手に固い床へ膝を着いた。
カツカツカツカチ、と、大きくはないが気を逆撫でる半端な金属音が重なりあって、先程までテマリの立っていたところに幾本もの吹き矢が突き刺さる。
「誰だ!?」
巨大扇子を床につき、辺りに目を走らせながら誰何して、テマリは返事を待たずに走り出した。
その後を追うように吹き矢がダラララッと線を描いて壁や床に突き立つ。
複数人・・・・・左・・・。ーそして・・・・。
進路の先、廊下の曲がり角、正面の扉。
僅かに開いたその隙。
テマリは目をすがめた。
「まずそこだッ」
地に伏すかという程低く前傾して左後ろから来た吹き矢をやり過ごし、右足で大きく左に踏み切って振り向き様に扇子を派手に振り抜く。
ギャッと鎌鼬の風が空を裂いて、背後にいた幾人かの人影へ斬りかかった。
くぐもった呻き声が上がるも、テマリは後も見ずまた走り出した。走りながら今度は扇子で横殴りの風を起こす。
正面の扉が煽り立てられて全開した。
・・・・見覚えのある・・・
開いた扉の陰から現れた数人の編隊の中央に立ち、目深に被ったフードの下で、どうやら笑っているらしい男。
中忍試験の様々な場面がフラッシュバックした。
テマリは扇子を持つ手に力を入れ、口角を上げた。
「・・・薬師カブト・・・・・お前か」