第23章 大ハード
海士仁の視線にカッとなった波平が、榛色の瞳に明かりを乱反射させながら、トンビを大きく捌いた。
腰に手を回し、細身の長刀をラッと抜き放ちガンと前へ飛び出す。
「・・・駄目だッ、なみひ・・さ・・・・ッ」
「止めてッ!!!杏可也さんに障ったらお腹の子が・・・・・ッ!!!!」
正気にかえった牡蠣殻の絶え絶えの声が、藻裾の悲痛な叫びが、波平の太刀筋を鈍らせた。
海士仁の肩口を白刃が浅く切り裂き、パッと血が散った瞬間、フイと彼と杏可也の姿が失せる。
跡には慌ただしかった空気の名残が、往生際悪く、辺りを掻き回すだけ・・・・・・