第23章 大ハード
頷いた我愛羅に牡蠣殻は力の抜けた顔をした。
「ありがとうございます」
周りの騒ぎを尻目に砂肝をつついていたデイダラがしかめ面をした。
「何だ、アンタ巧者じゃなかったのか?牡蠣殻。うん?どっかのイモ裾みてェな真似しちゃ駄目だろ?イモは一本で充分だぞ?てか、一本もいらねえな。や、全然なくていいな。おい、ちょっと辛くねえか、この
南蛮。うん?」
「イモイモうるせえぞ、チビ。辛えから南蛮なんだろが。我愛羅さんとこの飯にアヤァつけンなんて百年早えんだよ。たく、お子ちゃまはふりかけご飯でも食ってろっての。ンでなきゃあっち行って静かにEテレでも観て親孝行しろ?ストレッチマンとストレッチして健康になっちゃいな。何なら早めに幼稚園に行っちゃう?よしなが先生がバスで迎えに来るよ?プ。ダハハ、違和感ねえ!ダラッダラ、しんちゃんと連んでても全っ然違和感ねえ!もういよいよ暁止めて春日部防衛隊入れ、オメエは!はい、お疲れ、牡蠣殻さん!酒じゃなくて残念!」
藻裾が景気よく牡蠣殻にお茶の入った湯呑みを差し出す。
「ありがとう、汐田さん。あ、触らないで下さいよ、見ての通り出血してますうぅわッ、あっつィッ!!!」
湯呑みを受け取った牡蠣殻が、不意に現れた大きな人影に押されてお茶をかぶった。
「あだだだだだッあづいあづいあづい!!!!染みる染みる染みる!!!!」
「おや。失礼しましたね。まあ私が悪いんじゃありませんが」
腕にかかった飛沫を払って、何ら悪びれぬ鬼鮫が辺りを睥睨した。デイダラのところで目を止め、眉を上げる。
「何やってるんです?」
「よお。朝風呂か?ずぶ濡れじゃねえか、鬼鮫?うん?」
にやにやするデイダラに鬼鮫は鼻を鳴らした。
「着衣で入浴するほど耄碌しちゃいませんよ」
そうして今度は眉をひそめた我愛羅と目を見張るカンクロウを見、口角を上げて牡蠣殻を見下ろす。
「巧いところへ来ましたね?先程までの不様さが嘘のような手際ですよ」
「全くです。私にしては珍しい。弾かれたせいかな?それとも星の下が変わりましたかね?」
「また迷信深い事を・・・」
「一度間抜けてみたらわかりますよ。脱力の度迷い言も深まるというもの」
懐から手拭いを取り出した牡蠣殻の腕に手を添えた者がいる。
リーだ。
かくしから白いハンカチを差し出して牡蠣殻の目を覗き込む。