第2章 相談役の相談係
散開後、藻裾は綱手に捕まった。そう、捕まってしまった。
二人は散開をネタに賭けをしていたらしい。
勝ったのは藻裾。これがまずかった。
藻裾は褒美として、綱手からシカマルの手伝いを言い使った。
「シカマルが慣れるまででいい。磯の事を教授しながらこれの手伝いをしてやってくれないか。何、賢いコイツの事だ、そう日はかかるまい。フ、そんな顔をするな。賭けの褒美というからには相応の付録をつける。砂に行くにしろ行かないにしろ、先立つものが多い程心丈夫だろう?破格の報酬で家庭教師でもやると思って手を貸せ」
明らさまに迷惑そうなシカマルと藻裾を前に、綱手はにやにやしながら言ったものだ。
「恋しい男に会いに行こうというのに不粋な横槍を入れてすまんが、私もお前が少しばかり気に入ってしまってなあ。どうだ?もう少し木の葉に逗留しないか?」
かの蛞蝓綱手姫にこうまで言われたら断れるものではない。藻裾は渋々と話を受けた。
シカマルにしてみれば全く迷惑な話である。戦車かブルドーザーと仕事をしろと言われたようなものだ。キツい。
「ンじゃ当ててみな?アタシの栄えある出自をさ」
空の湯呑みの口を掌ではたきながら、藻裾が口角を上げる。
シカマルはフンと腕を組んで椅子の背もたれに背を預け、これも口角を上げた。
「テメエで正解言っちまってるだろ?気が強くて山っ気がある潜師。これ以外テメエに該当する師族はねえじゃねえか」
「お、何だ、そんな簡単だったか?じゃ、こりゃ無効だな」
「・・・勝手なヤツだな・・」
「そうだな、じゃ、牡蠣殻さんの師族を当ててみろよ。こら難しいだろ、ほとんど話してねえもんな、あの人とは」
「あの人は野師じゃねえか?」
「何だ何だ、詰まんねえな、当たりだよ。何でわかんの?」
「・・・何となくフラフラした感じがすんだよな。波平さんも野師じゃねえか?」
「アッハッハッ、ESPテストみたくなってきたな。エスパー魔美か、オメエは。ん?てこたァアタシが高畑さん?うっわ、ビミョ~」
ケタケタと笑う藻裾に、シカマルは不覚ながらも気遣わしい目を向けずにいられない。一般的な基準で見れば十分元気そうだが、汐田藻裾として見れば明らかに勢いが落ちている。
「・・・オメエ、会いてえヤツがいんだろ?五代目には俺からも言ってやっからよ、行けよ、もう」