第12章 xxx 11.幽閉
睨めっこをしていた。
変顔対決ではなくて、スマホに表示されたデジタルクロックとだ。
こんなにソワソワするのは何年振りだろう。それこそ、遠足やクリスマスを待つ子供のように、胸を高鳴らせて彼を待つ。
予約の時間を10分過ぎた頃だろうか。
ドアの向こうから赤葦さんと光太郎の談笑する声が聞こえてきて、一気に鼓動が駆け足になった。
『京治くん!マジで!マジで本番だけは駄目だかんね!?』
『そんなもんしなくても満足させられますから、俺は』
『なっ……ぐ、ぐうの音も出ない!』
うるさい。おもに光太郎が。
そんなことはさておき、どうしよう、急に緊張してきた。どんな顔をして迎えよう。第一声は何を言えばいいんだろう。
気分はまるで恋する乙女だ。
キィ、と控えめな音を立てて蝶番が鳴く。半分ほど開かれたドアから覗く、細めのスーツに身を包む赤葦さんの横顔。
今度は壁を隔てずに、彼の、甘さを含んだ声が聞こえた。
「あ、光太郎くんさ、デリバリー頼んでよ。フルーツと酒類適当にいくつか。お願いしますね」
「えー……うち飲食の許可とってな」
「お願いしますね」
「…………はひ」
赤葦さんの圧力恐るべしである。光太郎噛んでるし。永久凍土よりも冷たい彼の視線は、今夜も絶好調に健在だった。