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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第12章 xxx 11.幽閉



「カオリ」

 赤葦さんから預かったジャケットをハンガーにかけていると、突然、名前を呼ばれた。

 初めて会った日と変わらぬ響き。
 疑問符を付けたように甘ったるく、私を呼ぶ。

 彼の声が私の名を囁く。
 ただ、それだけなのに。

 とてもいやらしいことをしているような、不思議な気分。お腹の深いところから息が漏れる。

「……どうしました?」
 平静を装って振り向いた。

「化粧してないね、今日」
 彼は愉快そうに目を細める。

 赤葦さんに視線を絡めとられたまま、数秒。金縛りにあったかのように動けなかった。言葉が出てこなかった。

 気付いてくれた。メイクのこと。
 それがすごく嬉しくて、同時にすごく恥ずかしくて、血が頬に昇っていく。


「それ、誰のため?」


 俺の為なのか、とは、彼は絶対に聞かない。そうだと分かっているのに、聞こうとしないのだ。

 正真正銘のサディスト。
 赤葦さんにはそんな言葉がピッタリだと思う。

「……っこ、これは、その」

 ごにょごにょと口の奥で喋ってみるが、彼は何も言ってはくれない。ただ黙って私の返答を待つだけ。

 捕食対象を見つめるような瞳が、私を捕らえて離さない。

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