第1章 制服姿の君
高校に通っていた頃、私は御幸くんに一目惚れをした。
きっかけは何だっただろう、クラスの中でもひと際異彩を放っていたのが原因か、それとも誰かと一緒に野球部の練習試合を見に行った時だったっけ。
とにかく彼がどんな人かも知らないくせに漠然とした美しさに惚れてしまったのだ。
それから私は時間があれば何度か友人を連れて野球部の専用グラウンドまで足を運んで練習風景を覗いたり、夏の大会の頃にはテレビの前や、球場の応援席で手に汗を握ってじっと試合を見ていた。2年生の時の予選の決勝戦、試合終了のサイレンと共にくずおれる野球部の先輩達、そして固い表情で何かを堪えていたような御幸くんの表情は今も鮮明に思い出せる。
とにもかくにも内向的な私には珍しく、彼を追う事に夢中になっていた。
背中が見えれば十分だった。話しかける度胸なんて無い。
この恋が成就する事も彼に知られる事も無いなんて、とっくに分かりきっていた事だった。