第1章 制服姿の君
見覚えのある制服、広い肩幅、陽に焼けて茶色く少し癖の入った髪の毛、上がった口角、黒縁のメガネ、そのレンズの奥で輝く薄茶色の瞳。瞳はこちらを見ている。
私はその人を知っている。
「!!?!?!?!?☆※○▼□@”*?!」
「ははっ そんなビビんなよ」
ビビるとかビビらないとか以前の問題だわ。いや、私はビビった、滅茶苦茶ビビった、ビビりすぎて尻餅ついたわ、卵割れてないかな。
「!??!!えっ え!??本物1?」
「本物。御幸一也、青道高校出身、野球部の2番、ポジションはキャッチャー。」
「えっ ええ〜〜〜・・・」
「驚きすぎ」
御幸くんはいたずらっ子のように笑ってたけど、確かにその時の表情は相当マヌケだったと思う。だってまさか家に帰ったらベッドの下に体育座りで男の子が待ってるなんて思わないじゃん。ただでさえ食べたお菓子のゴミやら埃を被ったぬいぐるみやらが転がった男っ気の無い女の部屋だぞ。
よくよく考えると不法侵入だった気がするんだけど、そんな常識吹き飛ぶぐらいのインパクトだった。只の同級生なら「何でうちにいるの!?」って冷静に聞く事が出来たと思う。
しかし相手は御幸一也、恥ずかしながら片思いをしている相手なのだ。尚更驚きもするだろうよ。しかも
「だって」
私は転がっていたリモコンを拾い、テレビの電源を入れた。
そこには大歓声の中今まさにバッターボックスに立つ御幸くんの姿があった。
緊張の一瞬。投手と打者の攻防。今まさに勝負の時___
「試合中なのに」
____そう、彼はプロ5年目の選手のはずなのだ。