第4章 キョリ 【微エロ】
桜「転校してきた時は身長同じくらいでさ!顔も綺麗で女の子みたいだったから、男の子苦手な私としてはすごく話しやすかったんだ!でもずっと総悟は笑ってくれなくて…」
総悟の口元から力が抜けた。口角が下がる。女みたい?俺が?
「桜花………」
無邪気に喋りながら歩く桜花を低い声で呼び止める。桜花が振り向くと顔を俯かせた総悟が自転車を引きながら後ろにいた。
桜「総悟?………どうしたの?」
総悟は低い声で続ける。
総「後ろ…乗りなせェ…降ってきそうでさァ…」
桜花が空を見上げると、分厚い雲がいつの間にか空を覆っていた。灰色の雲は今にも雨を落としてきそうだ。
桜「大変!降ったら結構濡れちゃいそう!お言葉に甘えるね!」
総悟は自転車にまたがり、片足で自転車を支える。桜花も後ろにまたがり、総悟の腰に触れる。
『俺ァ桜花に触れられるだけでこんなに胸が苦しいのに………』
総悟は来ていた学ランを脱ぐと桜花に手渡す。
総「これ被りなせェ。間に合わねェかもしれねェが、風邪なんてひかせたくないんで」
桜「え!でも総悟濡れちゃ…」
総「いいから。しっかり捕まってなせェ」
案の定土砂降りだった。総悟のワイシャツは雨でびっしょりだったが、桜花は総悟の貸してくれた学ランのおかげであまり濡れずに済んだ。マンションの前まで着くと、桜花を下ろし、総悟も一旦家に帰ろうと自転車を引いた。呼び止めたのは桜花だった。
桜「総悟!ごめんね。私コレ借りちゃったから総悟が濡れちゃった…」
総「いいんでィ。謝ることはないですぜィ。桜花が濡れなくてよかった。あんた、すぐ風邪ひくから…」
総悟の亜麻色でサラサラ髪の毛も、雨で当然びっしょりだった。そんな姿で桜花に向かって微笑む。
桜「あのさ…そのまま家に帰ったら風邪ひいちゃうよ。家、少し遠いって言ってたでしょ?よかったらうちでお風呂入りなよ。私その間に部屋の掃除してるから」
総「………………………」
桜「…総悟?た!大変!!すっごく顔が赤いよ!!もしかしてもう熱上がっちゃった!?
」
総悟の口元に力が入る。顔は耳まで真っ赤で桜花と目を合わせられないでいた。
『とりあえず、風呂に入るだけだ!桜花に心配かけちゃいけねぇ!落ち着け俺!何か色々飛びこえてる気がするが落ち着けェ!!』
頭がグルグルする。風邪の症状じゃないことは確かだ。