第3章 大切な君
晋助は壁に寄りかかり、腕組みしながら黙って二人の話を聞いていた。銀時と晋助にとって、どこの馬の骨かもわからない総悟の存在は邪魔だった。利害は二人とも一致していたのだ。だが、頬を赤らめながら銀時に反発する桜花を銀時、晋助、そして神楽の胸ぐらを両手で掴んでいた総悟も見逃さなかった。
銀『えぇ⁉︎⁉︎な…何この感じ⁉︎⁉︎桜花、顔赤ぇし…』
銀時は後ずさりしながら思った。
晋『…まさかとは思っていたが、あいつの事…』
晋助は目を見開きながら腕組みを解き、立ち尽くす。
総『え⁉︎⁉︎…桜花、何でィその顔……今まで見たことな……もしかして桜花も……オ、俺のこと…』
総悟は神楽の胸ぐらを離すと、期待いっぱいの嬉しそうな視線で桜花を見つめる。瞳は輝き、頬は赤く、口元は驚きのあまり開いていた。
桜花はそんな輩達の事を気にもとめず、話続けた。
桜「と、とにかく、総悟は特別なの!総悟に何かしたら銀ちゃん達でも絶対許さないからね!」
桜花のキラキラした雰囲気に負けそうだった銀時の心は、桜花の「総悟は特別」という言葉にガラガラと崩れ、完全に負けた。
銀「…ガクッ……」
銀時は人通りの多い廊下で膝をつき、あからさまに落ち込んだ。そんな銀時の横で、総悟は完全に顔を赤くし手の甲を口元にあてながら少しうつむく。桜花と目が合わせられない、目が合わないように視線は桜花と反対方向へ。いつの間にか気付かない間に、桜花にとって自分が特別な存在であると今気付いたのだ。恋愛に発展するなんて期待してなかったゆえ、総悟の鼓動はどんどんどんどん早くなっていく。
総「お、落ち着けェ……俺の心臓…!今、桜花に伝えにゃならねェ…俺もお前と同じ気持ちだってこと……!」