第2章 1
城下の市場はかなり賑わいがあり、山と海があり、尚且つ街道の整備も整っているこの国は食料資源もかなり豊富だ。おまけに農耕技術も高いのだから食料自給率は他国に比べて良い方である。
近隣に比べれば比較的裕福な国である。おかげでこの国の人間であるというだけで賊に襲われるという被害も聞くが…。
ともあれ国民全員が富裕層かと言えばそうでもない。
先程述べた奴隷の件にも関わるが、ああいったのを公に扱うのはあまり国民に良い顔をされない。異種族と言え、国民の中にはそういうのに敏感なのもいる。
そこで所謂奴隷市場は貧困層があつまる区画でひっそりと経営している。
この区画は衛兵もあまり入らない、よく言うスラム街だ。スラム街とを繋ぐ路地は一本で其処を通ると荷馬車や人々が行き交う大きな路地に出る。
衛兵はこのスラム街とを繋ぐ路地だけを監視している。
どこの国でもそうだ、貧困から脱する為に富裕層を襲うなんて事は。
だが、悲しいかなこの国の、特に富裕層はあまり大金を持ち歩かない。
大体の富裕層は貴族様なので顔が利く。それを利用して店で買い物をする時は後日払い、言う所のツケにしてる。
窃盗されても被害を最小限に抑える為の工夫でもあるのだろう。
さて、そんな貴族様みたいに顔が利く訳でもない私はしっかり現金を持って買い物を済ませないといけないわけだ。