第2章 かわいいひと(GS3 新名)
「遅ぇぞ!オレ様を待たせるなんて、どうゆうつもりだ!」
正門のところに立っていた、真っ赤な髪をした男の人が、先輩を見るなり声をあげた。
あの人が、先輩の彼氏……?
「コウ、ごめんね。ちょっとお話ししてたから」
先輩が首を傾げると、その人は頭の色と同じに顔を真っ赤にして「べ、別にいいけどよ……」と、しおらしくなった。
あれ、なんか、どっかで見たことあるような……。
「つーか、話って誰とだよ」
「えっとね、バンビちゃん」
「はぁ?!バンビって鹿か?!おまえついに頭おかしくなったんじゃねぇか?!」
「失礼しちゃう!ねぇ、バンビちゃん!」
先輩がこっちに振り向いて、彼氏の顔がしっかり見えた。
「あ――――ッ!!ハリーだ!!」
「バンビちゃん、コウのこと知ってるの?」
「勿論ですよ!ReD:Cro'Zのボーカル!!ライブだって毎回行って……って、本物のハリーだ!うわー!」
突然大声を出したわたしに、怪訝な表情をしていたハリー……さんは、驚いた顔をしてわたしに詰め寄った。
「マジで、オレらのファン?!」
「すっごいファンです!なんて言ったらいいのかわからないくらいファンです!」
「マジ?!」
「はい!彼氏もすごいファンで、一緒にライブ行ったり!」
「うおー!すげぇ!」
「こっちこそすげぇです!あー、どうしよう、どうしよう!」
「コホン!」
興奮したわたしたちの話を遮る咳ばらいが聞こえて振り向けば、先輩が少しふて腐れた顔でこっちを見ていた。
「わりぃ!」
「ごめんなさい!」
「……いきなり呼び出したくせに、ふたりで盛り上がっちゃってさ……」
慌てて頭を下げても、先輩の頬はまだふくらんだままだ。
「悪かったよ!何でも言うこと聞くから!な?」
ハリーさんは、慌てて先輩のご機嫌を取る。
あんな先輩の表情、初めて見た。
やっぱり、彼氏の前じゃ違うんだ。
「……新発売のてりうシェイク買ってくれたら許す」
「……おまえチャレンジャーだな……。わかった!奢ってやる!」
「ん、許してあげる」
なんか……、可愛い。
笑い合う先輩とハリーさんは、すごくお似合いに見えた。