第2章 かわいいひと(GS3 新名)
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缶コーヒーを傾けながら話していると、先輩の携帯が鳴った。
「ちょっとごめんね?」
「はい!」
ディスプレイを見たとき、先輩の表情が少し和らいだ。
いつも見せてくれる笑顔とは少し違う、凄く嬉しそうな柔らかい笑顔。
「もしもし?コウ?」
先輩が纏う雰囲気と話し方で、電話の相手は彼氏なんじゃないかと思った。
いつも先輩が、左の薬指にはめてる指輪を、くれたひと。
「え?今から?……大丈夫だけど……。うん、うん、わかった。もう少ししたら行くね」
通話を終えてわたしに向き直った先輩は、申し訳なさそうに口を開く。
「ごめんね、バンビちゃん。用事が出来ちゃって。本当ごめんね、せっかく話し掛けてくれたのに……。埋め合わせは今度するから!」
「いいですいいです!……もしかして……彼氏ですか?」
「えっ!……うん、そうなの。いつも突然でさ、困っちゃうよね」
全然困ったような言い方じゃなく、むしろ嬉しそうな感じで。
照れて頬を染めた先輩に、同性ながらときめいた。
これは彼氏さんも大変だ。
「先輩、時間平気ですか?」
「あっ、そろそろ行かなきゃ」
時計を確認した先輩は、慌てて立ち上がる。
わたしもそれに合わせて立ち上がった。
「お昼買いにコンビニ行くので途中までご一緒します」
半分嘘で半分本当。
お昼を買う予定なのは本当だけど、先輩にあんな表情をさせる彼氏を一目見たくなった。
「ふふっ、じゃあ行こっか」
きっと先輩もわかってる。
でも、笑ってくれたのは、先輩も自慢の彼氏をわたしに見せたかったからかもしれない。