第6章 突撃!桜井家ご訪問!(GS3 桜井兄弟)
リビングに戻ると、オヤジの姿はなかった。
勝手口のサンダルがなくなっている所を見ると、ここから脱出を謀ったらしい。
逃げんな、クソオヤジ!
「俺、オヤジ探してくるわ」
「いいのよ。放っときなさい」
「ハァ?何でだよ」
「お父さん、恥ずかしいのよ。ふふっ。お腹が空けば帰ってくるわよ」
何が恥ずかしいんだか。
腹が減ったらってガキかよ。
オフクロも何笑ってんだか…。
「ほら、琥一もケーキいただきましょう?」
楽しそうに笑うオフクロに言われて、俺は渋々ダイニングのテーブルに腰を下ろした。
ルカが選んで、アイツが買ってきたらしいケーキは、食べ切れないほどあった。
ひとつめを食べ切って、俺はギブアップしたが、俺以外の3人は話に花を咲かせながら、パクパクと食べ進めていく。
吸い込まれるように消えていくそれに、胸やけがしそうになった。
ルカがよっつめのケーキに手を出したとき、玄関の扉が開く音がして、オヤジが帰ってきたことを知らせる。
「……ただいま」
控えめにリビングに入ってきたオヤジは、気まずさを全面に押し出してソファーに腰を下ろした。
「おかえりなさい」
「お、お邪魔してます…!」
「……ああ」
「お父さん、琉夏と彼女から美味しいケーキを戴いたのよ。食べますか?」
「……貰う」
アイツにもオフクロにもぶっきらぼうに返したオヤジは、言葉少なにタバコをふかした。
「さて、わたしは夕飯の準備するわね。琉夏たちも食べて行くんでしょ?」
「うん」
「あ、わたし手伝います…!」
「あら、じゃあお願いするわ」
エプロンを着けるオフクロの後に着いて、アイツの姿がキッチンに消えた。
ダイニングテーブルに掛けていたルカがオヤジの向かいのソファーに移ってオヤジを見つめる。
「ケーキ美味いでしょ」
「……ああ、美味いな」
それだけ答えて、オヤジはまた無言になる。