第6章 突撃!桜井家ご訪問!(GS3 桜井兄弟)
そして、運命の休日。
オフクロは何だかんだ腹を括ったようだが、オヤジは朝からソワソワしっぱなしだ。
いつもの威厳はどうした。
社員を怒鳴り付けるときのあの迫力はどこへいった。
終いにゃ、ちょっとタバコ買いにとか言い出す始末。
知ってんだよ、タバコの買い置きはサイドボードに置いてあんの。
「逃げんなよ」
コンビニ行くだけだと喚くオヤジの腕を掴んでソファーに戻す。
んだよ、いい年こいたオッサンが情けねぇ。
家を出ようと俺の隙を窺うオヤジと、リビングのドアの前を陣取りオヤジと睨み合う俺。
なんだこりゃ。
何で俺がこんなに必死になってんだよ。
ったく…、ルカの野郎、覚えてろよ。
睨み合う蛇と蛙…――、もちろん俺が蛇だ――の状態から動かずにいると、来客を知らせるチャイムが響いた。
パタパタとスリッパを鳴らして玄関に急ぐオフクロを横目に、オヤジはようやく観念したように溜め息をついた。
「ただいまー」
「おかえり、琉夏」
「はっ、はじめまして…!」
「あらあら、いらっしゃい」
俺の苦労も知らずに、呑気なやり取りが玄関から聞こえる。
俺も顔ぐらいは見せておこうと、そこに足を向けた。
ちらりと見えたオヤジは、何故だか複雑な表情をしていた。
「よっ、コウ。なんか久しぶり」
「おう。てめぇは放っとくと連絡すらしねぇからな」
「あはは。随分な言いようだな」
けたけたと笑うルカの後ろには、こっちも久しぶりな幼なじみの姿。
ほんの数ヶ月振りなのに、少し大人びて見えたアイツは、だいぶ緊張しているようで、ルカの後ろに隠れるように立っていた。
「よう。オマエも、久しぶりだな?」
よく知った声を聞いたからか、アイツは俯き気味だった顔をパッとあげて、数ヶ月前まで毎日見ていた笑顔で俺を見上げた。
「コウくん!久しぶり!」
どれだけ成長しても、大人になっても、この笑顔だけはガキの頃から全然かわらねぇ。
俺たちを見て微笑んだあの頃のまま、泣きそうなくらい眉を下げて、でも優しくて、柔らかい笑い方。
玄関で今にも話しはじめそうな俺たちを気にしたのか、オフクロがリビングへと促した。