第6章 突撃!桜井家ご訪問!(GS3 桜井兄弟)
その電話が鳴ったのは、何の変哲もない、ありふれた日のことだった。
「はい、桜井――」
『コウ?俺、ルカ』
「あ?何だよ、珍しい……」
本当に珍しい。ルカがわざわざ家に掛けてくるなんて、何かあったのかと勘繰ってしまう。
『えーと……、うん、あのさ……今度の休みに、そっちに顔出そうかと思って』
「来りゃいいじゃねぇか。てめぇんちだろーが」
少し前にいろいろあって、ルカん中にあった、わだかまりやらなんやらが、やっと解けたと思ったが。
このバカはまだ何か気にしてやがんのか。
『父さんも母さんも居る?』
「んなもん俺が知るか」
この問題はルカ本人が自分から近寄らなきゃダメだ。オヤジとオフクロはかなり前から諸手を上げてルカを待ってる。
そう思って素っ気なく返したのに、続いたルカの言葉は、俺の予想の範疇を越えていた。
『いや、…その、アイツも連れてくから』
「ハァ?!」
『そゆこと。父さんと母さんにも言っといてよ。じゃあね』
聞き返した俺を気にするでもなく、言いたいことだけ言ったルカは電話を切った。
ツーツー、無機質な音を鳴らす受話器を思わず本体に投げる。
何でルカはこうも突然なんだ!
つーか、アイツを連れてくるのはまだ良しとして、そゆことって何だ!
口をついて出そうになった溜め息を飲み込み、今しがた自分で投げた受話器を元に戻した。
週末にルカが彼女を連れて来ると、頼まれた伝言を伝えたときのオヤジとオフクロの驚きっぷりは凄まじかった。
俺たちが家を出ると言ったときは全然動じなかったオヤジが湯呑みをひっくり返し、オフクロは洗い物の皿を足の甲に落として涙目になってた。
そんなに慌てなくても、ルカが入院したときに病院で会ってんだろ。
そう言うと、オヤジは見掛けたから逃げた、オフクロは見掛けたけど話し掛けられなかった、と返ってきた。
息子の彼女(あの時は違ったが)なんだから声ぐらい掛ければいいんだ、と続けると、だって恥ずかしいじゃない、と何とも情けないご返答。
つーか、オヤジは逃げんなよ。
そんな両親に溜め息を吐きつつ、週末は家に居るように念を押した。