第1章 DDD発売記念
なんだか寝苦しくて眠れなかった夜、風にでも当たろうと海辺を散歩していると、砂浜に人影が見えた。見覚えのある銀髪が風に揺れ、月の光をきらきらと反射していた。
近くまで行ってみると、やはりリクだった。わたしの知っている昨日までの彼とは打って変わって、長く伸びていた髪は、短く切られてしまっていた。
「髪、切ったんだね」
言うタイミングを逃す前に形式的に触れておいただけで、さほどの疑問はなかった。
返答ももちろん予想の範囲内で、
別に切るまでの余裕がなかっただけで、伸ばしていたわけじゃなかったからな、と返ってきた。
世界の心を守る勇者にも、ようやくひと息つくくらいの余裕が出来たという事だろう。
常夏の島の夜空は、星が近くまで遊びにきたかの様な、いわゆる満天の星空というやつだった。
夜の潮風もたまには悪くないけれど、こんな夜更けに、わたしと同じく散歩でもしていたのだろうかと考え始めると、リクの方が口を開いた。
「こんな夜更けに、散歩か」
わあ、よく分かったね、と返せば、
お前は単純だから、誰にでもわかるだろ、と言われてしまった。
そんなことはないよと否定したかったが、それこそ、そんなことはどうでも良く、リクこそ何を、何か探しものでもと聞いてみた。