第1章 DDD発売記念
怖い夢を見たのだと、
彼女は枕を持って現れた。
ベッドにふたりで腰掛けて、どんな夢だったのか聞いてみると、俯いて顔を隠してしまった。
よっぽど怖かったんだな。
「…思い出させてごめん」
無理に聞こうとは思わないし、夢は夢だからと元気付けてやろうと思って、大丈夫かと声をかけると、
「違うの、言う決心がつかなくて」
…?
俺は話が読めなくて、彼女の顔を覗きこんだ。
俺の気配に気付いてか、彼女はようやく顔を覆っていた手をどかしてくれた。
「ソラが、いなくなる夢を見たの」
「わたし、すごく嫌で、怖くなって…」
「だから、つかまえにきたんだけど」
ソラを見たら、恥ずかしくなって、だって、こんなの変だよね、だって、それって…と、小さな声で続けてくれた。
最後の方はよく聞こえなかったけど、
「大丈夫だって、ほら」
俺はここにいるだろ、どこにも行かない。
両手を強く握ってやると、繋いだ手から、恥ずかしい気持ちが伝染してきた様な気がして、つい手を離してしまった。
「あ、お、俺の見た夢の話、するよ」
怖い夢は夢のままにして、
面白い夢の話で忘れちゃおうよ、
ほら、こうすれば、
繋いだ手から俺の夢が伝染して、悪夢の方がどこかへいっちゃうよ、
そうして、ふたりで眠りに落ちれば、
夢の中でもふたり一緒だよ。
*ドリームドロップ
ディスタンス*
(一緒に寝ちゃったね)
(お、俺、何もしてないよな)
(したよ)
(えええ、どうしよう、ごめん)
(したでしょう、
どこにもいかない約束)
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初出…2012.03.24.