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KHDDD発売記念再録

第1章 DDD発売記念




「なんだか最近、眠たくてな…」


あくびを噛み殺しながらベッドに横たわると、返事も聞かずに眠ってしまった。
どうやら世界を守る勇者様は相当お疲れの様だ。

布団の上に眠るものだから、
わたしの布団をかけてあげよう。
常夏の島の夜が 熱帯夜とは限らないのだ、最近は夜風が心地よい日が続いている。
窓から入る月の光が銀髪を透かして輝いていた。

無防備な寝顔というのはまさにこのことなんだと思う、顔を近付けても起きないところを見ると、本当にぐっすりと、眠りに落ちてしまっている様だ。

寝顔を見るのはいつぶりだろう、そういえばいつも、わたしより後に眠って、わたしより先に起きていたから、なんだか初めて見る様な不思議な感じがする。

ふと、気付いた時には既に遅く、手は髪を梳くように撫でてしまっていた。

ああ、しまった。

少し身を強張らせてから、
翡翠の瞳がわたしを捉えた。


「ん……くすぐったい…」


眠たそうな瞳をそのまま閉じ、わたしの手を掴んで眠ってしまった。
起こしてしまったかと思ったが、まだ寝ぼけていたようだ。

さて、どうしたものか、掴んだ手を離してくれる様子が無い。
この時のわたしはどうかしていた、きっと満月がそうさせたのだと言い聞かせて、ほのかに温まった布団に入ってしまったのだ。

触れ合う手と手から伝わる熱と、すぐ隣の優しい体温の心地よさに、わたしはすぐに意識を手放した。
眠るという事は、こんなにも優しいものだっただろうか。

悪夢を見るようになってから数日後、島が闇に飲み込まれた日から、わたしは眠るのが怖くなった。
また悪夢を見て、もっと最悪な出来事が起こる様な気がしてならなかった。

眠れない夜は、そのまま眠らず、
朝日を迎えてから眠った。
夜明けのひかりが悪夢を照らして消してくれると思って、そうしていた。

明け切らない夜に、
君に抱かれて見る夢は、
夜明けと共に帰ってきた君と、
新しい朝を迎える様な、
温かい夢だった。


*ドリームドロップ
      ディスタンス*


(どうしておまえと一緒に寝てるんだ?!)
(ん…おはよう…)
(まったく…だらしないぞ)
(…だらしないのはおあいこでしょう)



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初出…2012.03.23.

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