第1章 新しい学園生活
1-7.立場をわきまえるように
「おや、衣更さま、どうしましたか?」
「あ、姫宮と伏見!」
真緒くんの悲鳴を聞きつけ二人の少年が駆け寄ってきた。
「女の子? アイドル科に?
ファンの子が侵入しちゃったとかじゃないの?
警備の人もちゃんと仕事しろよー!
まったく、家畜のくせに生意気だよね~♪
奴隷、さっさとコイツつまみ出しちゃって♪」
名札を見る限り姫宮桃李くんは傲慢に笑った。
……人を家畜とか奴隷呼ばわりって何様?
脳裏に“クソガキ”の四文字がよぎった。
「えぇーっとぉ、アタイ、正真正銘ここの生徒だしぃ?」
学生証を取り出してこれでもかって程、
クソガ……桃李くんの顔面に突き付けてやった。
「ちょっとぉ、近いんだけど!
えぇ~、プロデュース科……? ホントに~?」
「ふむ、名生佳代さんですね。
写真付きの書類は坊ちゃんも処理したはずですが……」
「えっ、聞こえな~い♪」
耳をふさぐ桃李。
「はぁ、大方私が処理してしまいましたからね……。
私は生徒会役員でもなんでもないんですよ?
生徒会役員になったからには責任をもって、
自分の仕事ぐらいは自分で片付けるようにしないと……」
「こんな所で説教始めないでよ!?」
ため息の後、グチグチと奴隷……弓弦が説教を始め、
桃李の注意は完全に弓弦の元へ。
「これが、北斗の言ってた……」
「ん? アンタ、なにか言ったしぃ?」
「ん、なんでもねー」
蚊帳の外になった真緒くんは神妙な顔で呟く。
多分アタイのことだと思い反応すると、
ふいっとはぐらかされた。
「っつーかさ、姫宮と伏見、B1も始まってることだし、
俺らも行動を始めたほうが良さそうじゃね?」
「……そうですね。
坊ちゃん、行きましょうか。」
「よぉ~し下等生物狩りにれっつご~♪」
桃李くんが不穏なことを言っているが、
三人はここを立ち去るようだ。
ふと、弓弦くんは振り返り、
アタイにしか聞こえないような声で、
こんな言葉を残していった。
「佳代さん、生徒会に繋がりのある私から忠告を一つ。
貴女はたった一人のプロデュース科の生徒、
非常に特殊な立ち位置にいます。
くれぐれも立場をわきまえるように」
……アタイの立場、ねぇ?
その言葉の真意は、未だアタイにはわからなかった。