第1章 新しい学園生活
1-6.何でこんなところに女が居るんだよッ!
「佳代、今からあの群衆に突撃する。
絶対に俺の手を離すなよ」
「いいなーホッケ~!
俺もカヨと手を繋ぎたいー!」
「うんうん、
抜け駆けはいくら氷鷹くんでも許さないよ♪」
龍王戦会場は多くの生徒が集まり混雑を極めていた。
アタイ達はなんとか見えるところへと、
アタイを守るように陣を組み突撃しようとしていた。
「「「せーの!」」」
走りだす三人組とアタイ。
しかし、真っ先にアタイの足は何かを引っ掛けて……。
「……ッ! あっ、ちょ、うわわぁぁっ!?」
「佳代ッ!?」
「カヨ!?」
「佳代ちゃん!?」
転んだ。
「ゲッ!
なんか、うわ、どんどん流されて、はぐれる……!」
転んだ際に繋いだ手を離してしまい、
どんどん三人組の姿が小さくなっていく。
げげぇ、見事にはぐれたしぃ……!
「……むぐっ、ってゆーか、この人口密度、
アリエナイしぃ!
痛ッ……ぷはぁっ!」
気づけばアタイは群衆の外側に。
し、死ぬかと思ったぁ……。
「……どうしよう……。
無理に中に入るのも危なさそうだし……。
迎えに来てくれると信じて待つべき?」
「おい」
「っつーか、足踏んづけた奴許さないんだしぃ……。
結構痛かったんだから……!」
「おい、お前だよ……!
白昼堂々なんつー格好してるんだ。
副会長に見つかったら説教どころじゃないぞ!」
「へっ?」
愚痴るのに必死で気付かなかったが、
あずき色の髪の少年がアタイに必死に話しかけていた。
名札を見ると「衣更真緒」の字が。
……さっき北斗がチラって言ってた名前のような……?
「ここだけの話、
今生徒会のメンバーがこの辺りを包囲している。
見逃してやるからさっさと着替えてこい。
……にしても、その格好は趣味なのか?
まさか“三奇人”にやられたのか?
ご丁寧に胸パッドまで……」
「ん? コレ、モノホンだけど?」
「はっ?」
眉間にしわを寄せて愚痴混じりに呟く生徒に、
アタイの胸を指し示すと、きょとんと目を丸くした。
「このおっぱいはモノホン。ってゆーか、アタイ、女子」
「な、何でこんなところに女が居るんだよッ!?」
男子校の生徒として、
至極真っ当な叫びが中庭に響き渡った――。