第1章 新しい学園生活
1-5.荒っぽいのはへっちゃらだしぃ♪
「お昼を一緒にって随分簡単なお願いだねぇ?
かしこまらなくてもいいのにぃ」
お願いとはお昼のお誘いだった。
まだクラスに溶け込めてないし、
ありがたいお誘いだったから当然断る理由もない。
「いや、佳代の貴重な時間をさいてもらうからな。
校内のシステムや設備の説明をしておこうと思って。
……ん、ここが職員室だ。
ちなみに担任の佐賀美先生は保健室に居ることが多い」
「ホッケ~ったらかったくるしー☆
そんなに愛が重いとカヨに嫌われちゃうよー?」
「愛!?
佳代ちゃんをお昼に誘った理由はまさか!?」
「あのなぁお前ら……。
くだらない茶番をしてるようなら置いてくぞ?
……と、ここが昇降口だ。
この階段を上がると二年生の教室だからな」
三人組とべちゃくちゃ話しながら校内を歩く。
……周りの視線を感じるけど、
上手く隠してくれたり話して気をそらしてくれて、
そんな優しさがありがたかったり。
「僕達は“Trickstar”ってユニットを組んでるんだけど、
もう一人メンバーがいるんだよ」
「遊木、その話は後にするぞ?
衣更はやたらと多忙だしな。
……なんだか中庭が騒がしくないか?」
昇降口を先に進んだ所で、
廊下の窓を覗くと男子生徒の群衆が見えた。
「テトラがB1の司会やるとか話してたよーな?
もしかしたら今日だったかも?」
「今日開催のB1ねぇ……?
ちょっと待って、調べてみるよ!」
真がスマホで調べると程なく騒ぎの正体が判明した。
「ふむふむ、
これからあそこで“龍王戦”をやるみたいだね?
妨害OKな殴り合い形式のドリフェスみたい」
「ふむ、随分荒っぽいな。
……佳代、アイドルのライブを見た事は?」
ちらりとアタイを見る北斗。
多分、アタイを連れていくか迷ってる気がする。
「一回だけなら行ったことあるけどぉ?
ドリフェスって確かライブみたいなものだよね?
ねぇ、龍王戦見てみたいかも。
荒っぽいのはへっちゃらだしぃ♪」
「おぉっ! 佳代ちゃん結構たくましい!」
真に背中を叩かれて、
アタイ達はドリフェス会場に向かうことに決めた。
――初めてのドリフェス。
そこで何が待ち受けているのか。
アタイは未だ知らない。