第1章 新しい学園生活
1-2.皆様ごきげんよろしゅうございますわでしてよぉ~?
「えぇー……そんなわけで、
共学化とプロデュース科のテストケースとして転入した、
名生佳代ちゃんだ。
皆さん適当に仲良くするように……っと」
佐賀美先生の適当なアタイの紹介にどよめくクラス。
うっわぁ、見事に男だらけ。イケメンだらけ。
さすがアイドル科って感じぃ?
ま、こんな所に女がぽんって転がり込んだらビビるよねぇ?
「女子だからってくれぐれも変な事はしないように」
――テメェが言うな。
また喉奥から出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。
アタイは清楚な転校生……アタイは清楚な転校生……。
しかしさぁ、いくらアイドルって言っても個性強すぎない?
外人や刀……?下げてる男子まで居る。
パッと見でわかる程度にはネタの宝石箱だ。
「じゃ、名生さんからも一言挨拶してもらえるかな?」
「ゴホンッ!」
咳払いで気合を入れる。
清楚なアタイデビューの第一印象だしぃ。
絶対に、絶対に、失敗するわけにはいかないんだしぃ!
「えぇーっとぉ、ワタクシ、名生佳代って言いますわ。
夢は理想の王子様に見合うお姫様になることでしてよ?
皆様ごきげんよろしゅうございますわでしてよぉ~?」
――ザワ……ッ!!!!
ここ一番ざわめく2-A。
右角の生徒の机が揺れる!
窓際真ん中生徒の消しゴムが飛ぶ!
最奥の席で早弁していた生徒の弁当箱が落ちる!
佐賀美先生の髪の毛からフケが舞う!
アタイのインパクトは絶大だったようだ……。
やり過ぎた。
ちょぉ~っと緊張しすぎただけだし……?
彼氏にはアタイの“清楚”は、
辞書に載ってる“清楚”とは違うってよく言われてる。
金髪眼鏡くんの眼鏡がずり落ちた。
何でポニテの人は刀に手をかけてるんだろう。
「な、なーんちゃってぇ……。
アタイ別に怪しい人じゃないしぃ?
気軽に、よろしくねぇ~?」
いきなりさむ~い第一印象を与えてしまった。
凍りついたクラスの空気がアタイを突き刺す。痛い。
諦めて、いつものキャラで行こうと思いました。まる。
苦しい空気の中、先生に案内され自分の席へ。
ふと黒髪の生徒と目があった。
(わ、びっくりしたぁ)
彼の瞳は他の人とはどこか違っていた。
そして、彼氏にとても良く似ていたのであった。