第1章 新しい学園生活
1-1.パッとしねーのはテメェの顔だよ!
「でー、お前が噂の転校生ちゃんか……。
ようこそ私立夢ノ咲学院へ、かな?」
見知らぬ学園の見知らぬ職員室の見知らぬ教師。
ぼそぼそとアタイの担任だと佐賀美先生が自己紹介。
ボサボサ頭を掻きながら四角いプレートを差し出した。
名生佳代と文字が掘ってある。
アタイの新しい名札のようだ。
キラキラ光ってアタイが新しく入ってきた人物だって事を、
アピールしているようだ。
「んー…成績は普通。芸能活動の経歴はなし。
芸能界クイズの成績も…ふぅん、丁度平均点。
記念すべきプロデュース科の新入生にしては、
なんだかパッとしない転校生だねぇ。」
――パッとしねーのはテメェの顔だよ!
喉奥から出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。
いきなりこんな所で暴れる訳にはいかない。
アタイは新しい学校で“清楚”になるんだ。
元ヤンでも、ギャルでもない。
大人しくて女の子らしい王子様に似合うお姫様……。
理想の王子様を見つけて……。
全世界に羽ばたくアイドルにする。
アタイは彼氏にそう宣言してしまったのだ。
ぶっちゃけ、勢い。
気づいたら夢ノ咲学院プロデュース科の1人目の生徒として、
転入することになっていた。
一体なにがどうしてどうなったんだ。
「気になるところといえば……、
胸が大きい所ぐらいか?」
おぉっと危ない!
アタイの拳が先生の顔面めがけて飛びそうになった。
クールダウン…クールダウン…。
アタイは清楚な転校生…アタイは清楚な転校生…。
「顔もまぁ……。
……んん~、及第点か」
――やっぱりぶん殴る。
「佐賀美先生。セクハラですよ」
アタイが拳を振り上げかけた時、
隣のデスクからため息混じりの声がかかった。
「名生さん、でよかったですよね?
彼には『しっかり』するようきつく説教しておくきます」
助け舟を出してくれたのは椚先生。
厳しそうだけどおかげで一命(?)を取り留めた。
「やだなぁ、あきやん。
説教だなんてまるで蓮見くんみたいじゃ」
「佐賀美先生、学校内ではアダ名で呼ぶなと、
一体何度言ったらわかるんです?
……そろそろホームルームの時間です。
さっさと教室へ行き生徒たちに挨拶をさせなさい」
この担任。大丈夫かなぁ?
不安と共に、新しい学園生活の幕が開けた。