第1章 新しい学園生活
1-17.止まっていた時計の針が動き出す
演劇部部室。
「Amazing! それは朗報ですね……!
嬉しすぎて制服から鳩を10匹も、出してしまいました☆」
高らかに響くは日々樹渉のよく通る声。
『渉たちには心配かけたね。
でも、ようやくfineの活動が再開する目処がたった。
新人……桃李や弓弦も元気にしてるかな?
久々に会える日が待ち遠しいよ』
ふふふ、と渉は誰かと電話をしながら、鳩を篭に戻す。
「それは私もですよ。
そうそう、今日噂の転校生が転入しましたよ。
なかなか面白いことになりそうです。
きっと皇帝陛下を楽しませてくれると思いますよ」
『へぇ、それは退院が尚更待ち遠しくなるね』
「えぇ、皇帝陛下の帰還を心よりお待ちしておりますよ☆」
くるっぽー。
同意するように鳩が鳴き、渉は通話を切った。
「騒ぎが起これば、皇帝陛下にとって最高のスパイス……☆
私達五奇人を分解させた生徒会に、
どのように刃向かうつもりでしょうかね?」
不敵な笑みを渉は浮かべた。
軽音楽部部室。
「クソうぜぇ! あの生徒会共め!!
一億回ぶっ殺しても気がすまねぇ!!!」
ドタバタと、小1時間ほど破壊的な騒音が響いていた。
あまりの煩さに棺桶から顔を出したのは零。
「どうどう、わんこや。そう暴れるでない。
葵くんたちのギターが壊れてしまうじゃろ?」
「うるせぇ吸血鬼ヤロー!
寝てただけのお前に何がわかんだ!」
「はいはい、我だってただ寝ていただけではない。
そろそろ止まっていた時計の針が動き出す頃合いぞ♪」
意味深に笑う零だったが、
その笑みがさらに晃牙を逆上させたのは言うまでもない。
佳代の自宅。
「……うっわぁ、重」
渉先輩から受け取ったデータを再生して、
あたいは頭を抱えた。
夢ノ咲学院を改革する……。
生徒会は絶対的な権力の持ち主だということは、
昼の一連の事件をちらっと見ただけでもわかった。
なのに、そんな野望を、
あの脳天気そうなスバルくんや真くん、
しっかり者の北斗くんや真緒くんが持っていたなんて……。
あたいは一般人だ。
特殊な能力なんて何もない。
そんなあたいに何を期待してるんだろう。
でも、あたいに出来ることがあれば……協力したい。
北斗くんの切なる願いを聞いてしまったのだから。