第1章 新しい学園生活
1-16.それは“愛”ではありませんか……?
「彼が何を話していたか、気になりませんか?」
そう言って、手のケータイを振ってみせる渉先輩。
そりゃ気になるに決まってる。
決まってるけど……。
「でもさぁ、それ、勝手に聞いちゃってもいいのかなぁ?」
「ふっふっふ……☆ 北斗くんも優柔不断ですよね。
寝ているかどうかわからない佳代さんに独り言なんて。
聞いて欲しいのか、秘密にしておきたかったのか……。
彼にも分からなかったのでしょうね?
しかし、貴女に話したという事は、
貴女に聞く権利があるということではないでしょうか?」
「そう、なのかなぁ……?」
「彼の話していたことはとても革命的で面白い内容でしたよ?
えぇ、とても……貴女には期待しているようです。
彼の独白は、貴女が相手だったからこそ。
彼にとって貴女は暗闇に差す一筋の光……、
といったところでしょうか?
今日出会ったばかりのあなたに話す理由、
それは“愛”ではありませんか……?」
意味がわからない。
零先輩といい、渉先輩といい、この学園の三年生は、
日本語で話したがらないようだ。
渉先輩は一旦そこで言葉を区切り、眼を細めた。
「なにより、貴女は隠し事されたら、
ずっと気になるタイプではありませんか?」
……まともに会話もしてないのに、人のことをよく見てる。
そう、めちゃくちゃ気になる。
多分このままだとずーっと気になり続けるんだろう。
何があったかわからないけど、
あのまま気まずい雰囲気なのも嫌だ。
「……そうだよね。
わかった、気になる。
その音声、聞かせて欲しいんだけど?」
「Amazing! よく言いました!
素直になるって素晴らしいですね……☆
今貴女のケータイにデータを送りますね!」
ボタンひとつであたいのケータイに通知が。
いつの間にメアド知られてたの?
「お礼は“いつか私を驚かせる事”で充分ですからね☆
それでは、そう遠くもないまた会う日まで……!」
直後また薔薇の花弁が保健室を埋め尽くすように舞った。
視界いっぱいに広がる花弁。
それらが消える頃には、渉先輩の姿は消えていた。
「……って、ちょっとぉ、この薔薇、片付けるのあたい!?」
薔薇の香りで頭がくらくらする。
病み上がり(?)のあたいには非常に面倒な仕事だった。