第1章 新しい学園生活
1-15.あなたの日々樹渉です……☆
「強姦魔ではありません!
そうです、私は、愛と驚きの使者!
初めまして、あなたの日々樹渉です……☆」
チャーミーなウインクをひとつ。
誰だよ。
髪の毛が長くて、怪しい仮面をつけた謎のお兄さんだった。
臭い名乗りに思わず冷めた視線になる。
……って、この人――。
「驚きましたね? 驚いたでしょう!
驚いていただけて私もうれしいです!
さて、セクハラどうこうするつもりはないですから、
お姫様、どうぞソファーへ……☆」
姫抱きされていたアタイは、ソファーに下ろされた。
お姫様呼びがめちゃくちゃムズ痒い。
――それより一つ、めちゃめちゃ気になる事がある。
芸能界クイズも平凡な点数だけれど、
“推しユニット”のメンバーぐらいは覚えている、筈。
「えーと、一つ、聞いていいですか?
日々樹渉って、あのfineの日々樹渉、ですか……?」
直後、保健室は真っ赤なバラの花弁で満たされた!
「Amazing! よくご存知ですね。
そうです、fineの変態仮面こと、あなたの日々樹渉です☆
ずっと眠っていたら喉が渇いたでしょう?
紅茶をどうぞ♪」
変態仮面でいいのか。
そしてその紅茶はどこから出てきた。
大量のバラの花弁もだ。
fineの事は元々テレビで見てた。
リーダーの天祥院英智様は、凄く王子様みたいで、
キラキラしてて……あたしの中の理想のアイドルだ。
……昼休みは色々テンパっちゃって気づけなかったけど、
生徒会の桃李くんと弓弦くんも、
fineの桃李くんと弓弦くんであってるだろう。
桃李くんの実物はテレビでの可愛いイメージと、
違ったから……っていうのもあったかもしれないけど。
二人共アイドル衣装じゃなくて、制服着てたしね。
「さてさて、先ほどとても驚きと愛に満ちた、
素晴らしい出来事があったようですが?」
向かいのソファに座る日々樹先輩。
先ほど撒いたバラの花弁がフワッと舞う。
「はぁ、心当たりないんですが……」
「私の演劇部に所属する氷鷹北斗くん、
彼は貴女に何やら話していませんでしたか?」
その“何”がわからなくて、
今滅茶苦茶モヤモヤしてるんだけどね。
「……何で知ってるんですか? 盗み聞きィ?」
「それと、盗聴を少しばかり」
犯罪じゃないか。
あまりいい趣味じゃないなぁ……。
