第1章 新しい学園生活
1-13.拙者、惚れ込んでしまうでござるよ~!
「拙者、遅刻寸前で慌てていたからして……。
時間短縮の為に階段を飛び降りようとしたでござるよ。
折り返し階段の、反対方面の階段でござるな。
そしたら丁度佳代殿がいて……」
「佳代の上に落ちたって訳だな。
その時に頭を佳代にぶつけて、
佳代は失神してしまったと」
「本当に申し訳なかったでござる~!
土下座するから許してほしいでござる!
ほら、この通り!!」
真緒と忍から気絶したときの状況を聞いた。
……思ってたより大事になっていた。
時計を見ればもう放課後。
そして二度、三度とすごい勢いで土下座をする忍くん。
「あー、ストップストップ! 土下座とか別にいいよぉ。
それで気分晴れるわけでもないしぃ。
ま、転校初日からおでこに、
こーんなにおっきい絆創膏張ることになるとは、
夢にも思わなかったけど。
ま、機会があったら借り返してちょーだい?
それで今回はチャラってことで」
がばっと起き上がる忍くん。
今度は涙目をきらきらさせてにじり寄ってきた。
「佳代殿ぉ~! なんてお優しい方でござるか!
拙者、惚れ込んでしまうでござるよ!
うしし、忍者のはしくれとして、
いつか必ず佳代殿のお役に立つでござる♪」
「待て仙石。
いきなり惚れ込んだ宣言したら佳代が困るだろ……。
っと、具合は大丈夫か?
眩暈とか吐き気とか、やばいことはないか?」
忍くんを引き剥がし、
心配そうに小首を傾げてきたのは真緒くんだ。
さっきはどたばたしてしまい、きちんと話はしていない。
「ううん、大丈夫。
えぇーと、アンタは生徒会の人だよね?
アンタもアタイに用?」
「おう、俺はTrickstarの衣更真緒。
んー、謝りたいっつー仙石の付き添いと、
……そこで石になってる北斗の迎えで来てただけだ」
真緒くんたちより少しは離れたところで、
北斗くんは固まっていた。
……ずっと黙ってたから気づかなかった。
「えぇーっと、北斗、くん?」
アタイがベッドの上から手を伸ばし揺さぶろうとする。
その直前で彼はハッと目を覚ました。
「……お、起きたのか。佳代」
何故だか、その声は初対面のときよりも、
よそよそしく感じた。