第1章 新しい学園生活
1-11.拙者、人殺しになってしまったでござる~!?
「……」
「くっくっく、その時が頼みなような、恐ろしいような……、
しかしまぁ、退屈はさせないでくれると助かるのう♪」
うん、零先輩の長~いお話だったが全く頭に入ってこなかった。
意味がわからない。
完全に零先輩の世界に入ってしまっている気がした。
とてもじゃないけれど、ついていけない。
「おぉ~い、零ちん、佳代が困ってるぞ?
そんなにベラベラ喋ってる元気があるなら、
教室まで連れてやったらどうだ?」
それだ!
しかし、零先輩はやれやれというように首を横に振った。
「いんや、じゃから我輩はもうぐったりじゃと言っとる。
昼の世界は吸血鬼には過酷すぎる世界なんじゃて。
……ふあぁふ♪
そんじゃあの、棺桶じゃないのが惜しいが、
我輩はここいらで一眠りするかの。
おやすみじゃ……」
そしてあろうことか机に伏せて寝始めてしまった。
なんて役にたたn……ゲフン、マイペースな先輩なんだ。
時計を見る。
現在、始業2分前である。
……えっ!?
「やっば!? ふざけてないで早く教室に戻らなくちゃ!」
「零ちんがごめんな……!
あそこの階段を降りればすぐ2年の教室だから!」
「ありがとう、なずな先輩!」
私はすぐに3-Bの教室を飛び出した。
なずな先輩の端的な指示がありがたい。
出先の階段を一段飛ばしに駆けおりる……と。
「わぁ~!? そこの御仁、危ないでござる~!?」
どこからか声が降ってきた。
慌てて振り返っても誰もいない。
「えっ、何?」
「上! 上でござるよ~!」
「はぁっ? ……ひぎゃぶっ!?」
「うわああ!?!?」
上を向いた、人影が迫ってきていた。
直後、頭に強い衝撃。
アタイはバランスを崩して倒れてしまった 。
ゴッ!
人影で覆われた世界で後頭部に更なる衝撃。
痛みを感じる前に遠のく意識。
「……うぅーん……」
「あわわわ……一大事でござる……!
拙者、人殺しになってしまったでござる~!?」
片目を前髪で隠した少年……仙石忍は悲鳴を上げた。
彼のアイドル人生……否、それ以外の人生もまとめて、
“殺人罪”という罪で道を閉ざされてしまうのか……!?
キーンコーンカーンコーン……。
始業のチャイムが鳴ったことも気付かず、彼は駆け出していた。