第1章 新しい学園生活
1-10.実に凡庸でつまらぬ女じゃ
「ん〜、所で午後の授業が始まる時間だぞ?
自己紹介した後でなんだけど、
光ちんが転校生振り回してる間に、
騒動も一段落ついた所だろうし、
二人共教室に戻ったほうがいいんじゃないか?」
和やかな時間に気を取られて忘れていたが、
確かに時計を見ると次の授業の5分前だ。
「あ! ホントだ!
遅刻しないようダッシュダッシュだぜ〜!」
即座に反応して駆け出した光くん。
めちゃくちゃ足が速い。
「……って、だからここどこさ?
2-Aの教室はどうやって行けばいいのさ?
簡単で分かりやすいルートがいいんだけど」
「くくく。さしずめ迷える子羊といった所じゃのう?」
藪から棒に、背後から渋みのある声が飛んできた。
えらく古風な演劇みたいな喋り方だ。
振り返ると襟足の長い黒髪の先輩。
名札を見るに朔間零……というらしい。
「うにゅっ!?
お前がこの時間にいりゅなんて珍しいら!?
授業に出ようとするのは偉いけろ、フラフラだぞ〜?」
「心配してくれるのかえ?
嬉しいのう♪
なに、我々の教室に面白いのが居ると聞いてな、
日中しんどい体引き摺ってでも見ておこうかと思って。
ほら、我輩は吸血鬼じゃし♪」
「吸血鬼……ですか。
アタイは見世物じゃないんですけど」
何を言っているんだこの人は。
確かに体調はあまり良くなさそうだけど。
「そうじゃのう、
確かにお嬢ちゃんは見た所ただの凡才じゃ。
もしかしたらこれから何か凄いものを持つかもしれんが、
現時点では実に凡庸でつまらぬ女じゃ」
この学校初対面から失礼な人多いね!?
「そうむくれるでない。
しかしの、お前さんはこの学園を揺るがす台風の目。
お主の立場の特異性、そのままにしておくのは勿体無い。
止まっていた時計の針を動かす小さな種なんじゃよ。
そう、期待している輩がいるようじゃよ?」
「あのさぁ、遠回しな言い方じゃわからないんですけどぉ。
もっと分かりやすい言い方で話してくれませんか?」
「おや、わんこみたいなことを言うのう?
くくく。ワザワザ嚙み砕いて説明せずとも、
そう遠くない未来にわかる時が来るはずじゃ。
その時にどうするかはお嬢ちゃんの勝手じゃ。
……ただ、その時は、
お嬢ちゃん自身の意思で選択して欲しいものじゃがの」