第3章 同居生活の始まり
色々ありすぎて頭が困惑したわたしは、意識を失っていた。
『んん……っ!?』
目を覚ますとお布団の上で寝かされ、六つの顔がこちらを覗き込んでいた。とても怖い。驚いて掛け布団を握りしめたまま起き上がり、後ろに引き下がると、同じタイミングで六つの顔はこちらを見つめる。だから怖いよ。
「梅子ちゃん、驚かせてごめん!俺のこと覚えてるだろ?そしてこいつらが俺の弟達。六つ子だよ」
しばらく見つめ合うというカオスな空気を壊したのはおそ松くんだった。
『あ…うん。でもわたしなんでここに……』
正直、じっと見つめてくる兄弟達よりも今この現状の方が知りたかったわたしは話を逸らした。
「んーっとね!Trick or Treatだからだよ!でもね、僕は野球の方が好き!だから野球しよー!!!」
「これ五男の十四松ね」
黄色いパーカーで焦点の合っていない目に少し恐怖を抱いたが、普通に野球が好きな人なんだろうという印象だった。ただ言ってることは理解できなかった。
『わたしお家に帰りたいんだけど……』
「駄目駄目駄目!今日から梅子ちゃんのお家はここだから!だって梅子ちゃんのお家もうないし」
『え、え、えーっ!??』
なんてこったパンナコッタ!
「それに、母さんにも父さんにも許可取ったから!俺の将来のお嫁さんって言ったらあっさりオーケー出た!」
へへんとおそ松は鼻の下をこすった。自信満々の時に出る彼特有の癖である。
「え、なにそれ、ずるい!」
「クソ長男ふざけんな!!」
ピンク、緑のパーカーを着た二人が騒いでいる。おそ松くんの話が本当なのであれば自分はここで暮らすのであろうか。わたしはガヤガヤ騒いでいる六つ子を見て気づいた。
『パパは、どこ……?』
「パパ……?」
先ほどまで騒いでいたのが嘘のように静まり返り、みんなの視線が再びこちらへ集まった。見つめ合うと素直にお喋りができない……と某歌のフレーズが頭で流れるのを阻止した。
「イヤミ……わたしのパパよ、パパはどこ?」
その瞬間、六つ子は揃って「「「「「「シェー!!!」」」」」」っとパパの口癖とポーズをした。ちなみにパパは驚くといつもこの動きをする。恥ずかしいので止めて欲しい、切実に。