第2章 カワイイ子には旅をさせない
それは嵐のような出来事だった。
家の扉をどんどん叩く音にわたしが出ようとすると、パパは自分が出るから待ってるように言い玄関に向かって行った。わたしは少しむっとした。いつもそうだ。パパはあまりわたしを人に会わせたがらない。もう20歳も過ぎた大人なのに、就職どころかバイトも許可してもらえなかった。内緒で働いていた時期もあるのだけど……。
そういえば、あの人はどうしてるのだろう。
ふと以前働いていた時に出会ったお客さんの事を思い出した。たしかこの世には大変珍しい六つ子、だったっけ?会った事あるのは六つ子の内の一人だけど……。ニートでお金無いのによく来てくれてたなぁ。(たまにお金足りなくてその分わたしが払っていたのだが)懐かしさにふふっと笑うと突然窓がパリーンと割れた。
『っ!!!?誰……?』
謎のコスプレした6人組が部屋へ侵入すると、梅子の顔を見て固まってしまった。
「え、ちょ、梅子ちゃん!?」
吸血鬼の格好をした人(声的に男の人)が話しかけてきた。ていうか今、自分の名前を呼ばなかったか?
「え、忘れたの?!ひどい……俺だよ、俺。松野おそ松!」
『おそ松くん!?ど、どうしてここに……?』
すごく落ち込んだように肩を落としたかと思えば、いそいそとコスプレを脱ぎ捨てた。彼は見慣れた赤いパーカーの松野おそ松だった。
「おそ松兄さん、こんな可愛い子とどこで知り合ったの?」
「ふっ……ついに出会ってしまっかカラ松gir「 黙れクソ松」ぐふっ」
「ど、どうしてイヤミの家なんかに……」
「ねーねー、この人もTrick or Treatするの~?」
「いいアイデアだな、十四松。梅子ちゃんもいただいて行こう!さて、全部残らずTrick or Treatするぞ!」
「「「「「おー!!!」」」」」
『……』
あ然とする中で、せっせと家具が運ばれるのに続き、わたしもおそ松くんにせっせと運ばれ、気がつけば車に乗っていてパパがわたしの名前を叫んでいた。
「梅子ー!待つザンスー!!」
『パパー!』
車窓から顔を出しパパの名を呼ぶも、すぐにパパの姿は見えなくなってしまった。
これって誘拐なんでしょうか!?わたしはどうなるの!?