第2章 カワイイ子には旅をさせない
「シェー!!いないザンス!!」
愛する娘はどこにも見当たらず、六つ子の数名がせっせと家具や床までを運び込んでいた。「Trick or Treat」の掛け声をしながら。
「何やってるザンスかー!やめるザンス!!」
口では言いつつ行動には出ない為、どんどん物が無くなっていった。
「よし、お前ら行くぞー!」
「「「「「らじゃー!」」」」」
おそ松の掛け声に兄弟は揃って返事をすると、トラックでイヤミの物を運んで行ってしまった。その中に愛する娘の梅子の姿もあった。
「梅子ー!?待つザンス!梅子を返せザンスー!」
『パパー!!』
困ったような顔をした梅子の姿を最後にトラックは見えなくなった。
「梅子ー!シェー!!!」
そしてこの日、イヤミは職と家と娘を失った。