第12章 松野家崩壊の危機
面接の結果から言えば、十四松くんとカラ松くんとチョロ松くんが保留組、そして一松くんは扶養組になった。
六つ子ママの扶養家族に入れなかった三人はとても悲しそうに落ち込んでいる。こんなの嫌だよ……三人と離れ離れなんて絶対嫌だ!
そう思ったわたしは、六つ子ママが座る机の前に立った。
「あらどうしたの、梅子ちゃん」
『余所者のわたしが口出しするのは失礼かもしれないんですけど、こんなの間違ってると思います! 事情は知りませんが六人とも扶養家族にしてあげてください!』
「え……でも、」
『わたしも働いて稼ぎます! お願いです、わたしは六つ子と、みんなと離れたくないんです! おそ松くんとトド松くんと一松くんだってそうでしょ!? 大事な片割れが離れたら寂しくないの……?』
耐えきれなくてわたしの目から涙が溢れてきた。
「梅子ちゃん……」
「僕も、本当は……本当は離れたくないよぉ」
「……俺も」
あんなに散々喜びを全身で表していた三人も、段々と目に涙を浮かべ始めた。それを見た保留組も泣き始め、わたし達は子どものようにわんわん泣いた。
その様子を困った顔で見ていた六つ子ママは諦めたように息をつくと「わかったわ、もう止めましょう」と言った。
みんなは嬉し涙を流して抱き合った。
『ありがとうございます』
六つ子ママに向かって頭を下げた。
「良いのよ、どうしようもないニート達だけどやっぱり私にとっちゃ可愛い息子達なの。選ぶことなんてできないわ」
「さて、父さんと仲直りしてこようかしら」と六つ子ママは部屋を出て行った。
本当は誰よりも六つ子を引き離したくなかったんだと思う。
だってその証拠に六つ子ママの目にも涙が浮かんでいたから。
家族って良いな……わたしもあんな家族が欲しかったな。
昔の事を思い出して慌てて忘れるように首を振った。
わたしにはパパがいるじゃない……!
でも、どこで何してるの? わたしの事心配じゃないの?
おそ松くん達を見て家族という絆に嫉妬してしまった。
翌日。
「はーーー!? 何それ! 理由がそれなの!?」
チョロ松くんの声が響き渡る。
「ええ、大事なことよ。"父さんが結婚記念日忘れてた"なんて」
「……クソつまらない」
今日も松野家が平和な事を願います。
(終わり)