第11章 番外編「酒は飲んでも飲まれるな」
チョロ松がイイ思いをしたあげく、梅子に酒を飲ませることを禁止にしたのだが、当然他の兄弟が納得するわけがなかった……。
「梅子ちゃん、俺のとこにおいで〜」
おそ松が一松のひざに頭を乗っけて甘えている梅子に声をかける。一松は猫に触れる時のような優しい手つきで梅子の頭を撫でているその一方で、横で梅子に口説いていたカラ松を鬱陶しく思い十四松に「クソ松に卍固め」と指示し、悲惨な目に合っているカラ松と楽しそうな十四松。トド松は無言で梅子の様子をスマホで撮影している。
『おそ松くん……?』
一松のひざから顔を上げおそ松を見る。頬が赤く染まっていて視線もあやふやで、相当飲んでいる様子が伺える。というより、飲まされたというのが妥当かもしれない。
「梅子ちゃん俺がいっぱい甘えさせてあげる!ほら、おいで~」
緩みきった顔で両手を広げるおそ松は、下心見え見えなのだが、酔っている梅子には関係なかった。
ふらふらと起き上がるとおぼつかない足取りでおそ松の方へ腕を伸ばして歩き出す。他の松はそれぞれの手を止め、無言で見守っている。
「よっと……」
おそ松の元へたどり着いた梅子はドサッとおそ松の胸へと倒れ込むがおそ松がしっかり支える。
「おそ松兄さんずるーい!!」
「独り占めは禁止という約束のはずだが……?」
「猫缶やるから戻って来い」
「一松兄さん梅子ちゃん猫じゃないから!」
なんとかおそ松から梅子を引き離そうと物で釣ろうとしたり、言葉で誘い出そうとするも、梅子は全く靡くどころかおそ松の顔をじっと見つめるだけであった。