第10章 酒は飲んでも飲まれるな【チョロ松side】
「チョロ松、醤油取って」
「はい」
「ん、ありがと」
手元にあった醤油をおそ松兄さんに渡す。朝食の時はいつもみんな寝ぼけてるから、必要以外誰も何も言わない。いつもこれくらい静かならいいんだけどね。まぁ、無理だけど。
それよりも気になるのが、梅子ちゃんとおそ松兄さんだ。
みんな寝ぼけてるとはいえ、梅子ちゃんにはちゃんと挨拶を交わす。朝食を母さんと作ってくれてもいるし、お礼の意味も込めて。
なのに今日の梅子ちゃんとおそ松兄さんといえば、目も合わさないし、梅子ちゃんに至っては顔を真っ赤にして俯いた様子だった。
……なんか怪しくない?
きっとあのバカ長男が何かやらかしたに違いないとは思うけど、すんごい気になる。
多分聞いたところではぐらかされるのは目に見えてる。何でわかるかって?そりゃ、六つ子だし兄弟だからね。
話が逸れたね。とにかくおそ松兄さんに聞き出すためには、お酒を呑ませて酔わせるしかないなと思ったんだ。とは言ってもおそ松兄さんが一番お酒に強いから聞き出せるか分からないけど、やってみるしかない。
万が一梅子ちゃんに嫌がることしてたら……僕が助けてみせるからね!
ちょうどこの日は六つ子で宅飲みの日だったのだが、おそ松兄さんから話を聞き出すどころか、僕はそこで忘れられない経験をすることになる。