第9章 嫉妬のおそ松
この間の家出(?)事件は無事に解決しましたが、家に帰ってからは本当に大変だった。おそ松くんとカラ松くんとチョロ松くんからはお説教されるし、十四松くんはお腹に張り付いて離れてくれないし、トド松くんは泣いてるし……。
何より驚いたのは一松くん。意識が戻ったかと思えば背中にくっついてきた。なんだこれ。まるで野良猫が懐いてくれたような感じ。最初は確かに嬉しかったけど、もう一週間もこんな感じ。流石にひっつきすぎじゃありませんか!?
『そ、そろそろ放してくれたら嬉しい、です……』
思い切って後ろにひっついている一松くんに声をかける。すると無言でこちらを見つめてくる。う、その目に弱いんでやめて下さい。
「……なんで?」
『え、えと、恥ずかしいから……』
「へー。自分はあんだけ堂々と人前で抱きついてきたのに?」
『ぐっ……あれは、その、ごめんなさい……』
自爆した。一松くんはあの事を未だ根に持っているのか、何かあればそれを出してきて逆らえないようにしてくる。ずるい、ちゃんと謝ったのに……。
「寒いし、ひっついてるだけ。なに、それともそんなに嫌なら離れるけど。その代わりもう一生ひっつかない」
『ええ!?す、好きなだけひっついてて良いから!』
慌てて言うと、一松くんは満足そうにニヤリと笑って耳元で「そうやってずっと俺だけを甘やかしてよ、梅子」と囁いた。
や、やばい……今、絶対わたしの顔真っ赤だ。一松くんは意地悪で言ったのかもしれないけど、心臓がバクバクして体が熱い。こんなことでドキドキするなんてバカみたいで恥ずかしい……どうかこのドキドキが一松くんにバレませんように。わたしは平然を装うのに必死で気づかなかった。
その様子を一松くんがニヤニヤしながら眺めていたこと、そしておそ松くんが無表情で私たちのことを見つめていたことに。