第6章 チョロ松と仲良くなる
今日はいつもより早起きして、六つ子ママと朝食の支度をした。相変わらず「いつ籍は入れるの?孫、孫はいつ見られるのかしら!」と誤解を解くのには時間がかかりそうです。そして、いつもなら六つ子はまだ寝ている時間だけど、今日は三男のチョロ松くんが起きて来てイスに座った。仲良くなれるように話しかけてみよう。
『おはよう、チョロ松くん!』
「っ!?え、あ、梅子ちゃん……その、お、おはよう!」
わたしが向かいのイスに座って話しかけた途端、チョロ松くんの半分も開いていなかった目が一気に覚醒した。
『早いね!何かあるの?』
「梅子ちゃんこそ早いね……えっと、僕はなんていうか、その……『あ、これにゃーちゃんだ!』えええっ!?」
恥ずかしいのか言うのを躊躇っているチョロ松くんの言葉を待っていると、チョロ松くんの胸ポケットに、にゃーちゃんの握手券が入っているのに気がついた。地下アイドルの橋本にゃーちゃん。けっこう人気あるんだよねぇ。歌がすごく好き!
『チョロ松くん、にゃーちゃんのこと好きなの?』
するとチョロ松くんは「終わったー!!!」と叫んでテーブルに顔を伏せて泣き始めた。えええ!?悪いことした!?聞いたらマズかったのかな……。
わたしはチョロ松くんを宥めようと立ち上がったのだが、何て言っていいかもわからずオロオロしてしまう。ど、どうしよう、ごめんなさい、とか?
『チョロ松くん、知られたくなかったのならごめんね。わたしもにゃーちゃんの歌とか好きで聞いてて知ってるからつい「っ!にゃーちゃんのこと梅子ちゃんも好きなの!?」え、うん。いい曲だよね』
わたしがにゃーちゃんの歌が好きだと伝えると、バッとチョロ松くんが起き上がったかと思えば、目をキラキラ輝かせた。あ、泣きやんでる、良かった…。
「梅子ちゃん……マジ女神!!!!」
こうしてチョロ松くんと一緒に朝ごはんを食べながら、にゃーちゃんの話(わたしは歌が好きで本人の事はあまり知らない)をした。だからチョロ松くんが一方的に、にゃーちゃんの話をしてわたしは相槌を打っていただけなのだが。それでも嬉しそうなチョロ松くんが見れて嬉しかった!
そしてチョロ松くんが早起きした理由は、もちろんにゃーちゃんの握手会に行くからという理由であった。そして彼を玄関で見送った。