第1章 施設の友達
「来月にはご自宅近くのリハビリ施設へ移れると思いますので、それまではここで、頑張りましょうね。」
「はい、よろしくお願いしますっ…!」
一階の部屋に到着して簡単に荷物を片付けた 仲本さんは「では、またお昼にきますね」といって去っていった。
明るくて綺麗な室内。
窓の外に広がる山々が、ここがどこかとても遠い場所のように思わせる。
実際は同じ県内なのに。
まだあまり動いてはいけないと言われていたので、おとなしくベッドに横になった。
…暇だ。
何もすることがないと、いろんな事を考えてしまう。
バスケのこと。
晴子さんのこと。
洋平たちのこと。
バスケ部みんなのこと。
「みんな…今頃部活やってんだろーなぁ…」
ふとつぶやくと、かすかに笑い声が外から聞こえてきた。
ゆっくり体を起こすと、外の花壇にさっきの女の子がしゃがんでいた。
空調がきいているため窓は閉め切ってあったが、彼女が笑っているのがわかる。
隣には見知らぬ女性が小さな犬を連れて立っていた。
花道は再び体をベッドに沈めると、彼女のかすかな笑い声を聞きながらいつの間にか眠ってしまった。