第1章 施設の友達
夏も終盤にさしかかったある朝、私が過ごしている療養所に変わった男の子がやってきた。
赤い頭…お猿さんみたいでかわいいな…
二階の窓から顔を出して、タクシーから降りてくる彼を見つめていた。
彼は私にずっと見られている事にも気づかず、少し緊張した面もちでスタッフの 仲本 さんと話をしている。
私は好奇心に駆られて、いそいそと玄関へ向かった。
「…だと病院の方から…ますので……」
仲本 さんの説明する声が聞こえてきた。
こっそり身を隠しながら声のする方向を見ていると、大きなドラムバックを肩に掛けながら 仲本 さんがゆっくり歩いてきた。
「それではお部屋へ案内しますので、こちらへ。」
「…はいっ」
赤い頭の子が姿をあらわした。
わぁ…おっきい子…
正面から見た彼は隣にいる 仲本さんよりもずっと大きくて、思わずじっと見てしまった。
「…ん? 仲本さん、あの人は…?」
「え?あぁ、ここの施設でリハビリしている子ですよ。 綺美佳ちゃん!」
「あっ…!はい!」
仲本さんに呼ばれて我に返った私。
「こちら、今日からしばらくここで治療することになった桜木君よ。年も近いから仲良くしてあげてね。」
仲本さんはいつもの優しい笑顔で私に話しかけた。
「ども!桜木花道です!よろしく!」
少し大きな声で自己紹介してくれた彼に、私も元気よく応えた。
「初めまして、 伊丹 綺美佳です!よろしくねっ」
笑顔で握手をして、彼は 仲本さんとゆっくり歩いていった。
これが、彼と私の最初の出会いだった。