第4章 歯車を狂わす者
「白崎君、ちょっとお話したいことがあって……」
人当たりの良い顔を貼り付けて美瑛はリオに話しかけた。
『えーっと……誰ですか?』
いきなり可愛い女の子に話しかけられたけど、見たことないし、女の子はミカサとしかあまり話さないからなぁ。もしかして僕にも春が訪れるかも……そんなわけないか。
「いきなりごめんね?わたしは佐倉美瑛って言うの、クラスは違うけど同い年だよ、よろしくね?」
『そうなんだ、よろしく!』
同い年で安心したのかリオはにっこりと微笑んだ。
「それで、本題なんだけど……」
佐倉さんは機関銃のように話し始めるが、僕は付いていけない。なんとか拾った単語はえれん。えれんってエレン??
『え、待って!!佐倉さんってもしかして……』
「エレンとは恋人同士なの」
『えええええ!そうだったんだ……』
好きとかそっちじゃなくて既に恋人同士だったのか!でもなんで僕に用事が……?
「最近、エレンが冷たくて……。白崎君からも言ってくれないかな?"彼女をちゃんと大事にしなきゃだめだよ"って」
あー、そういう事なら任せて!と佐倉さんに伝えた。
エレンに、彼女いたなら僕に教えて欲しかったなーって言ってやらなくちゃね。
「あと、お昼とか、帰りとか白崎くんいつも一緒にいるでしょ?わたしもエレンと一緒に食べたり帰ったりしたいなって。ダメかな?」
『全然大丈夫だよ!むしろ僕の方が邪魔だったね……ごめんね』
彼女、だもんね。
そりゃ一緒の時間過ごしたいもんね。
ズキっとまたあの胸の痛みが走った。
エレンもエレンだよ。
ちゃんと僕が叱ってやらないと!
「ありがとう。やっぱり白崎くんに相談して良かった」
佐倉さんはそう言って女子トイレから去っていった。
『あれ……?』
ここ、女子トイレ……。
確か自分は廊下を歩いていて……あ、そうか!
引っ張られたのだ……彼女、佐倉さんに。
ガタッと物音がして、振り返ると一つだけ閉まっている個室があった。まずい、このまま誰か出てきたら僕は変態扱いされてしまう!
僕は慌てて女子トイレから走り去った。
「白崎くん……ミカサにお伝えしなければ!」
トイレから出てきた女の子はそう呟いた。