第2章 財前光
「かわいい…?」
「せや。みょうじさんめっちゃかわええで。…あかんな、少女漫画みたいやな…恥ずいわ…」
「…私も恥ずかしい…」
「体育館行かへん…?二人きりってなんかしてしまいそうで怖いわ…」
「財前くんは無理にひどいことしないよ。」
「言い切るなぁ…」
「伊達に今まで財前くんのこと見てないもん…」
「せやけど男は狼って言うやん。」
いつもと同じ感じの言い方でちょっと笑ってる。顔は赤いけど。
キュンときた。これじゃまるで本当に少女漫画のようではないか。
「今、胸の奥の方がキュンってした。」
「ほんまか…!」
「今までも財前くんにキュンってさせられてたけど、今人生で最大のキュンがきた…!」
「…みょうじさんのその顔かわいすぎるわ…男やけどキュン死しそうや…」
「お互い様だよ。」
「せやな。」
そう言って二人で笑った。財前くんの笑った顔はすごく好きだな。
「そろそろ先輩らのお笑いも山場やから行こうや。」
「うん。あ、ハンカチ洗って返すね。」
「ええって別に。」
「しないと私の気がすまないよ!」
「そないに言うなら…しゃーないっすわ。」
「ありがとう。」
「…ほら。」
手を差し出されたので手を重ねると恋人繋ぎにされた。
「こういうの初めてだな…」
「俺も。」
そう言ってすぐそこのドアからはいる。そういや体育館すぐそこだったんだ。
「後ろの方でもええか?」
「うん。」
ほんとにドキドキした。夢みたいだと思った。
暗い体育館で唯一明るい舞台上ではテニス部の先輩達がお笑いをしている。
「夢やあらへんで。」
「え?」
「今みょうじさん「夢みたい」っちゅう顔しとったで。」
「そんな顔してたかな…?」
「しとったで。俺もやけど。」
「すごいロマンチックだったもん。夢みたいだよ。」
「俺もそう思うわ。」
「財前くんは私の王子様だよ。」
「おおきに。少しこっち向いてくれへん?」
「なに?」
「みょうじさんほんまかわええわ。」
そういうと財前くんは私の唇にキスを落とした。
「ざ、財前くん…誰かに見られたら…」
「誰も見とらんて。見られてても俺達付き合っとるんやし。」
「…初めてだったよ…?」
「俺もそうや。」
「まだドキドキしてる…」