第2章 財前光
「周りから一歩ひいてるっちゅうか…ただ、だからこそ皆気づかんことにもよぉ気づいてるよな。」
「そうかな…」
「みょうじさんは俺がどううつっとるん?」
「そうだなぁ…前まで結構不良っぽいっていうか、ちょっと怖かったんだよね。クラスでもこっぴどくフラれたって泣いてる子とかもいたし…」
「今は?」
「聞いてたより優しいなって。アニメとかも好きみたいだし。」
「わりと好きやで。そういやみょうじさん前の学校で仲ええ子とかおったん?」
「いたよ。その子もアニメとか好きでたくさん話してたよ。」
「じゃあ今は前より話すのは少なくなったんか。」
「そうだね。」
「俺じゃあかんか?」
「え…?」
友達にってことかな…私なんかが財前くんと友達なんて…
「…アニメの話とか、これから俺ともせんか?」
「友達、ってこと…?」
「友達やなくて、彼氏なんてどうや…?」
「えっ…」
さっきから木々を揺らしていた風がピタリとやんだ気がした。それと同時に、心臓がいやというほど音を立てて全身が熱を帯びてきた。
「あー…いややったらべつに…友達からってことでええんで…よろしくお願いします…」
財前くんの顔が耳まで赤く染まっていて、手はこちらに差し出しているのに視線は明後日の方向を向いている。
「よろしくお願いします。」
そう言って財前くんが差し出している手を両手でぎゅっと包み込んだ。正直恥ずかしくて、どこかに逃げてしまいたいような気持ちになった。
「ほんまにええんか…俺で…?」
「財前くんがいいの…」
「俺結構口悪いで?」
「でも優しいでしょ?」
「白石部長とかのほうがかっこええんやない?」
「財前くんが一番かっこいいよ。」
「前から好きやってん。みょうじさんのこと。」
一瞬ドキッとした。だって、財前くんが私のことを好きになる理由がわからないから…
「なんで私のこと…私だって財前くんみたいに皆に好かれてるわけでもないし、地味じゃん…なんで…?」
「地味なわけないやん。一番かわいいやろ。」
「かわいくない…」
「みょうじさんもアニメ好きなんかな?って思って見てたんやけど、だんだん体育してるときとか、昼休み中庭におるときとか、ふとした瞬間「かわええな」って思うようになって…」