第4章 幸村精市
そのあと彼女は仁王くんを待ち伏せすると言ってそのまま教室を出て行った。あのままストーカーか何かにでもならないか少し心配なところだ。
そのあと言われたとおり教室で待っていると、彼女が言ったとおりすぐに待ち人は来た。
廊下を走ってくる音が聞こえて少しびっくりした。どんなに急いでいてもそんなことしてるの見たことないから。
ガラッとドアが開くと待っていた人がきた。
「なまえさん、待った?」
「あ、いえ!」
「そっか。」
そう言うとフッと微笑んだ。
「改めて、幸村精市です。待っててくれてありがとう。」
「え、はい…知ってます…」
「別に今日じゃなくてもよかったんだけど、今日じゃないと後悔する気がしたから。」
「そうなんですか…」
正直呼ばれた理由がよくわからない。友人は告白かもしれないと言っていたがその可能性は多分少ない。
夢でも見ているような感覚になっていたが、次の言葉で現実に戻された。
「早速本題に入るけどいい?」
「だ、大丈夫です…」
「なまえさんは俺のこと嫌い?」
「えっ?」
そんな訳がない。むしろこの人が嫌いな人などいるのだろうか…
「嫌いだなんてそんな…!」
「じゃあ好き?」
「えっと…」
好きだと言ってしまおうかと思ったが、うまく言葉にできない。少しの沈黙がとても長い時間に感じた。
ところが次の瞬間、
「好きだよね?」
有無を言わせない言い方に言葉も出ずこくりと頷いてしまった。
「よかった。」
「な、なにがですか?」
「だって、こんな言い方してなまえさんが俺のこと嫌いだったら恥ずかしいじゃないか。」
そう言われて「幸村くんが嫌いな子なんていない」と言おうと思ったけどやめた。私が自分で告白しているようで恥ずかしい。
「生憎だけど、なまえさんが思ってるようなカミサマじゃないんだ。俺は。」
「え…?」
「俺のことずっと見てるのに、俺と目があったらひどく怯えた顔になる。」
「そんなこと…」
「ある。」
そんなつもりはないのだけれど、本人からみるとそう見えるのだろうか。
でもいま気付いた。目が合うことが多いけどその分幸村くんもこちらをみているということだ。
「あの…いつも見てごめんなさい…」
そういうと幸村くんがため息をついて、私びくりとするとさらにこちらに歩み寄ってきた。