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テニプリ短編小説

第4章 幸村精市


「なまえさん、ちゃんと俺の目見て。」

両手で頬をおさえられ、幸村くんの瞳がこんなに近くにあることが信じられない。思わず見入ってしまう。

「俺もちゃんと人間なんだ。カミサマなんかじゃない。」

私はなにも言えず、じっと目を見つめることしかできなかった。

「カミサマはなんでも手にできるかもしれない。でも俺はただの一般人だ。だから、欲しいものは努力して手に入れる。」

「……」

圧倒された。幸村くんは天才なわけじゃない。全部努力なんだ。
そうだ、当たり前だよ。幸村くんはきっと誰よりも人間らしいんだ。

「好きだ、付き合ってくれないか?」

「え…?」

突然のことに思わず目を見開いた。これは告白なんだろうか…一瞬のうちにいろいろな思いが脳内を駆け巡る。

「俺の方見てるのが気になったから、勝手だけど君のこと観察してたんだ。そのうち、好きになってしまってね…」

驚いた。好きにならないで、とでも言われると思ったから。
思わず視線を斜め下に向けた。すると突然私の頬に添えていた幸村くんの手の平がゆるゆると撫でるように触れた。
「急にごめん…俺こういうのはじめてでどうしたらいいかわからないんだ…怖いなら突き飛ばして逃げてもいいから…」

「そんなことない!」と言いたかったけど、この異様な空気感に呑まれてうまく言葉が発せない。自分じゃ見れないけどきっと今多分泣きそうな顔なんだろう、私。
言葉をきいて、幸村くんの顔を見上げると少し悲しそうに見えた。

「最後に一つだけきかせてほしい。今の気持ちを。俺のこと、嫌い?」

「嫌いなわけないじゃないですか…私幸村くんのこと好きです…怖いわけ、ないじゃないですか…!」

叫ぶように言い放ってしまった。
目からはついに涙が溢れてきてしまった。
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