第3章 不二周助
そう言ってまた不二先輩は笑っていた。
そのまま歩いて行き、バスに乗った。どこに行くのかも知らされずに。
「どこに行くんですか?」
「それは着いてからのお楽しみっていうことでどうかな?」
「別にいいですけど…」
「はは、むくれてる顔もかわいいね。」
「またからかってますよね…!」
それに対しての返事は言葉ではなく、頭を軽く撫でられた。
着くまでの間、私は最近の学校の様子やテニス部の話をした。不二先輩は高校の様子を話してくれた。
そうこうしている間に目的地に着いたようだ。
「ここどこですか?」
「僕の好きな所だよ。杏と来たかったんだ。」
「そうなんですか?」
ここのどんなところが好きなのだろうと頭を捻っていると声をかけられた。
「でもまだ本当に行きたい場所には行かない。」
「どうしてですか?」
「まだ時間が早いからね。もし遅くなったら僕がご両親に謝るよ。」
「そんな…!でも多分連絡入れれば大丈夫です。そんなに門限とか厳しくないですし。」
「そっか。じゃあ別の挨拶になるかもね。」
別の挨拶ってなんだろう?と思ったけど口に出さなかった。
時間潰しといいながら雑貨屋さんに入って行った。雰囲気が良くて来たことがないのに懐かしい気持ちになった。
「なまえ。」
「なんですか?」
「欲しいものとかある?」
一瞬、このお店にあるとてもかわいいペアリングが思い浮かんだが、今日は不二先輩の誕生日だ。
「あー…いえ!私より不二先輩は欲しいものないんですか?」
「うーん…お金で買えない物かな。」
お金で買えない物とはなんだろう…とても気になった。でもうまく次の言葉を紡げなくて「そうなんですか…」としか言えなかった。