第1章 【黒子】ボク、本当は。
「返事はまだいらないです。きっと混乱してるでしょうから。でも、ちゃんと本当のボクのことを知ってもらって…意識してもらえると嬉しいです」
そう言って、めったに笑わない黒子君がにっこり笑うから、私は何も言えなくなって、とりあえず頷いちゃった。
それからというもの、黒子君は「そういう言動」ばかりするようになった。
「おはようございます、悠紀さん。今日はポニーテールなんですね。うなじが程よくエロ可愛くて悠紀さんによく似合ってますよ」
「こんにちは、体育だったんですか?…汗臭いか、ですか?いえ、むしろ逆です。運動して息を切らしてる姿とか、顔が火照って赤くなってるところとか…たまらないです」
「あ、悠紀さん。今帰りですか?…ちょうどよかった。ボクも今帰るところだったんです。一緒に帰りましょうか。…夜二人っきりだと、なんだか興奮しますね」
小、中と、大人しい女子友達とばかりつるんでいた私は、こういった話題に慣れていなくて、黒子君が話すたび、いつも赤面してしまう。
でも、黒子君が変なのは言動だけで、実際には変なことをしてくるわけじゃないし、普通に黒子君と話してる時間はとても楽しくて…実はちょっと好きだったりする。
あ、でも黒子君のことが好きなわけじゃ、なくて…。自分が黒子君のことをどう思ってるのか、私もよくわからない。
けど、ずっとこうやって仲良く話せる関係でいたいな、と思ってた。