第7章 夜陰の逃避行~思わぬ酔宴
固まる当人(大倶利伽羅)に、
「……からくりか」
ぽつり、と声を落としながら、半ば面白がるように頷いてすら見せる蜂須賀に、
「貴様、何を頷いて……っ」
大倶利伽羅の矛先が一気に蜂須賀へ向かいかけた、そこへ。
「ぶっ」
「ぷぷっ」
笑いを押し殺し損ねた、吹き出すような声が厨の戸口から洩れた瞬間、大倶利伽羅の眼光が閃くように投げつけられた。
「出てこい!」
大倶利伽羅は、いたくご立腹だったが、
「くっ、はは。悪い、つい吹き出しちまった」
「す、すみません……」
面白かった、と今度こそ笑いながら姿を現したのは薬研と…その後ろには、謝りつつもやはり笑みを押し隠しきれずにいる前田。
そして予想外…というべきか、更にその向こうには山姥切の姿までがあって、大倶利伽羅は思い切り引き攣った。
どいつもこいつも、何しにきやがった…と、大倶利伽羅は青筋を立てつつ、物騒なほどにドスの利いた声で呻る。
ギラつく眼光は軒並み彼らを射抜いたが、
「お前に言われる筋合いはない」
抑揚のない声で、まずばっさりと切り返したのは山姥切で。
そもそも眠る必要もないのだから、何をしようが勝手だろう…と続いた上に、大倶利伽羅の形相が更に変わる間もなく、前田は反射的に頭を垂れ、薬研がそんな前田を庇うように踏み出した。
「そうは言っても、あれだけ分かりやすい気配をまき散らされちゃ、どうしようもねえと思わないか」
刀剣男士は、人間よりもずっと気配に敏くできている。
もっとも、厨は彼らの室からも離れている為、さすがに中の気配が容易に伝わることはなかったのだが。
厨に乗り込んだ蜂須賀の声を皮切りに、何事かと気配を探ってみれば、それはすぐさま薬研達にも知るところとなる。
つまるところ、こいつは自業自得だろ、と薄く笑いながら締める薬研と、渋面そのものな大倶利伽羅が向き合った…ところへ。
「やげんだー!」
「ぅわっ!?」
ほぼ真横から酔っ払い(○○)にタックルをかまされ、薬研はあまりの勢いに受け止めかねると、それでも○○が傷を負わぬよう庇いながら、真後ろへ尻餅をついた。