第7章 夜陰の逃避行~思わぬ酔宴
彼はすぐさま少女の到来を悟ったが、当の○○は暗がりゆえか、それとも別の理由があるのか(この時の○○は空腹で目一杯だったのは誰も知らないところだ)、何かを探す素振りをするが早いか、やがて目的のものを見つけたのか、距離を置いても分かりやすいほどの、それは嬉しそうな気配をまき散らしながら『それ』に飛びついた。
そうして、○○が手にしたものは櫃で。
いきなり握り飯を作り出したと思うや、それを頬張り始め、しかし、それも束の間、少女は唐突に苦しみ出した。
喉につかえるほど○○を驚かせたのが己とは、よもや思いも寄らない大倶利伽羅だったが、いきなりの○○の変化にはさすがに驚いた。
一体何事か、と近づいてみれば、何ともはや、(一応)主である少女は喉を詰まらせているらしい。
その時の大倶利伽羅の手に、酒で満たされた柄杓が握られていたのは、果たして幸か不幸か……。
しかし、○○がそれで救われたのは確かだった…のだが、いかんせんその後が、よろしくなかった。
酒に免疫のない○○は、既に酔っ払いである。
気分が悪いとか、そのまま倒れるとか、そうならないのは幸い…かもしれないが、しかし。
「はちすかさん、なにおこってるの?」
「あ、いや、それは…だな、主」
怒って当たり前だろう、とか、そもそもこんなに心配したのに一体何をしているんだ、とか。
蜂須賀にしてみれば訴えたいことは山ほどあるのだが。
生憎と、目の前にいるのは酔っ払いだ。
正論を振りかざしたところで、恐らく…いや絶対に、無意味だろう。
はあ、と額に手を当てる蜂須賀をよそに、○○は、んん?と首を傾げ、傍らの大倶利伽羅を見上げる。
どうしても名前が思い出せなかったが、蜂須賀が彼の名を呼んでいたことで、どうやら○○も思い出したものか……。
途端、
「あっ!」
分かった、とばかり、○○は、ぴっ!と大倶利伽羅を指差して。
「おーからくりさん!」
「……………」